朝ノオト

空想に遊ぶ

ドーナッツの穴

ドーナッツの穴について考えよう。

 

ドーナッツを作る人はドーナッツの穴に気づきもしない。それは穴ではなくて、生地を丸くつなぎ合わせた時にできるものであって、ドーナッツでない部分。生成の瞬間を知っているし、意識しない。揚げる時、効率的に熱が行き渡る形状。ドーナッツはリングであって、穴なんてない。

 

ドーナッツを食べる人は、出されたその物体に穴があると認識する。本来あるはずの生地の中心がくり抜かれてしまったように見える。それの作られ方を知らないから、今の状態しか見えないから、穴が見える。ドーナッツをその他の小麦粉の塊のお菓子ではなく、ドーナッツたらしめる、愛らしい穴。

 

あるものが作られる前、作られた後、観察を始める時点の差異が認識の違いを生んだりする。それは時として、ドーナッツに穴を見つけたりする。ドーナッツを作った人にとってそこに開いていた穴は結構面白い発見だったりするのかもしれない。

 

おしまい