朝ノオト

空想に遊ぶ

夏を終わらせて

 

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秋を感じる間もないうちに、肌寒い日がおもむろにやってきた先週だったので、

急かされるような胸騒ぎに、取り急ぎ、夏を惜しむのと終わらせるのをしましたよ。

今年はこいつに決めた!と制服みたいに着ていた開襟シャツをしまって、お気に入りにブルゾンなんかを引っ張り出してきた週末だったのに、随分と暑い日々が続いていますね。夏の終わりのセンチメンタルを返して欲しい。

とはいえ、暑さになど屈せず、まだまだ振り返ります。

夏をエンジョイしたい時期に悶々と迎えた大学院入試、ついに会うことなく終わってしまった正体不明の恋愛、イタリア美女が眩しかった海外旅行、いろいろあったようで何もなかった感じもするのは夏休みにはつきものな感情です。

夕方のニュースでは秋をすっ飛ばして冬がやってくるなんてことを言っていました。

春夏秋冬、季節は巡るみたいな名前をつけてはいても、気温や室温のグラフはきっと規則的な線を描くのだろうけど、春も夏も秋も冬も、その時の感情を肉にしてしまう概念だからこそ味わい深くて、戻っては来ないよね。なんて考えてしまうのは季節の変わり目のせいでしょう。秋、もしかすると冬を迎える準備ができている人たちに笑われないように、この夏を終わらせましょう。

 

「夏のための六首」

香るでは 留まりおれぬ 金木犀
あせつても吹き 半袖も過去

秋風に 衣かえ色めく さざめきは
木立ではない はしゃぐ人間

うたた寝の 降りてプツプツ 鳥の肌
撫でる腕に 乗り過ごしたか

開襟の 過ごした熱の こもる胸も
いえなかった 夏は水玉

明石行き まばらなひとを 眺めみた
電車つくころ 海は冷えたよ

月が半分 と君の言った はじめまして
今日、満ちたと じわりはにかむ

 

夏に友達に教えてもらって、読んだ穂村弘

普段は定型のない詩を書きますが、教えてもらった作品が素晴らしかったので、つい影響されて短歌を書きました。その実、整理のつかない感情も三十一文字のリズムに乗せて仕舞えば、腑に落ちてしまう感じがします。快感にはならない気持ちでも、悪くはないです。

短い言葉に一瞬の、それでいて鮮明で情報過多な感情を包み込ませてしまうのは静かなシャウトである感じもします、放り投げるのと同義であるような不安。

投げ出すようだと言ってはいても、電車で行った須磨の砂浜で読んだ何首か、あるいは何編か、そして自分で詠んだ何首かにはしっかりこの夏の気持ちを取り込まれた気がします。

 

 

回転ドアは、順番に (ちくま文庫)

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