朝ノオト

空想に遊ぶ

或るアホのいちにち

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 筋肉はやはり魔法ではなかった。

 重量が軽かったとはいえ久しぶりのトレーニングで本意気を出してしまったので、体が悲鳴をあげてしまっていた。ここ三日間くらい朝起き上がるのにも、吊り革を持つために腕を上げるのにも苦労するほどの筋肉痛に苛まれた。呻きながら布団から起き上がる音が部屋に響くのを聴いて、晩年の祖父を思い出した23才の朝。

 もしかしたら先日の高揚感は、車にはねられた人が直後はドーパミンドバドバで痛みを感じずにいるみたいな現象に近いもので、ただ興奮していただけかもしれない。それでも筋肉痛はトレーニングを重ねるにつれてマシになっていくようなので、精神にまつわる筋肉の効能を諦めてはいない。トレーニング後のあの細かいどうでもいいことは気にならない気分はとても健全だと思ったので。

 とにかくここ数日は筋肉痛のことしか考えられない、全ての思考、感情がその痛覚に埋もれてしまう状況だった。まさに、「筋肉痛が痛い」といってもまだ足りないくらい痛みでいっぱいな日々。痛みであれなんであれ、体の内側から発するもので満ちていたので何を書く気にもならなかった。全然楽しくないので健全ではないのだけれど、これも1つの充足なのかもしれないと思った。

 健全ではないけれど一応は充足している状態があるというのがなかなかヤバいけれど、「満たされている」以外にも自分には大切なパラメーターがあるのだとわかっていれば大丈夫なはず。楽しいとか、疲れていないとかそういうのも気にしないと満たされていてもおかしくなってしまう。僕はおかしくなると、めっちゃ寝るというバグが出て、半ばオートマチックなリセット機能が働くので大きな齟齬は起きない。自由のきく学生の身分のうちはほとんど支障がないのでありがたい。

 めずらしく忙しい一週間と重めのレポート、そして筋肉痛の三点セットを経て、昨日もそんなリセットが起きる予感がしていたけれど、案の定、12時間ぐっすり眠ることになったので大正解だった。お陰で今朝は好調で、オザケンを聴きながら電車に揺られてこれを書いている。

 調子のいい時に調子を保つための策をガンガン講じていったほうがいいとわかって来た。今までは無理しないとか、よく寝るとかしながら、しんどくなって来た時にうまくそれをどうにかする方法ばかり考えて来て、絵を描いたり歩いたり、色々して来た。それでも、しんどさの種類によってはそんな解消法を実行することもできないことがあるし、絵を描いたりするのはいつでも楽しいので、そもそもしんどいのを予防することが大事だと思い至った。猿でもわかると言われる理屈である気がするけれど、なんにせよ精神の文明が新たなステージへと進歩したので正義だ。

 そんな積極的なしんどさ防止策が狙いとするところはシンプルで、辛いのと、眠いのを回避すること。つらーい!無理!ヤバ谷園の無理茶漬け!という具合に内なるギャルが現れてしまうその前に、冷静な脳みそを駆使して戦略的に行動する。

 辛いの原因で最大のものは「追われる」感覚。胸をメラメラと焦がして、時に夜も眠れなくさせる厄介なヤツである。しかも、こいつに追い込まれた時にはなぜか興奮して、なんとかやり過ごした時には、擦り切れた精神と引き換えに謎の達成感を得てしまうという悪魔のようなヤツである。そもそも近づいてはいけない。命に限りがあるという現実から自然と生まれてくる、原理的な存在なのだろうけど今はそんなことはどうでもよかった。

 兎にも角にも、楽チンな時はこいつを避けるのをサボりがちなのだけれど、サボりたいよりは、楽でいたい、なので上手に逃げるしかない。追い込まれる前にやるべきことをやってやるしかない。追い込まれると想像力もしぼんでしまって楽しくもないし。

  僕は頭が良くないので、目的と手段が離れていると頑張流のが苦手だ。例えば、お腹が空いたからといって、田んぼに苗を植えるようなことが出来ない。夕飯が美味しく食べられるようにというモチベーションでは、おやつを抜いたりできない。なのでやるべきことを前もってやるのはすごく苦手だ。さっきまで書いていたように、その意味が理解できても、自分の性分を乗り越えるのには工夫が必要。 さしあたって今回、僕が考える作戦はこの際だから「眠い」を避ける工夫も盛り込んでしまうもので、「朝一番にその時すべきタスクを並べて、それが終わったら好きに寝ていいことにする」というものである。猿でもわかる、再び。

 当たり前のことではあるのに、1日を適当に生きて、最後に帳尻を合わせるという恥ずかしい生き方をしてきて、それで生きながらえてきてしまったので、こんなことでも十分なアイデアになってしまう。冷静な時であれば、達成すべき目標から逆算して、小さなタスクに落とし込んでいくことは苦手ではなく、そのスキルを今まで人に仕事を任せることにばかり使ってきた。普段は面倒なのでやらない。別にやらなくても好きなことができていたので。しかし、最近はやりたいことをするためにはコツコツやらなきゃいけないことが多くて、そのための時間を作らなきゃいけなくなってきた。だらだらやっていては、寝る時間が削られてしまう。寝たいし、やりたいこともやりたいしとなると、もう王道しかない。効率よくやって、ちゃんと区切りをつけて気持ちよく寝ればいい。

 朝起きて、元気があるうちに、そして何かにのめり込んだりする前に、1日でやるべきことを書き出してチェックリストを作って、あとは深く考えずに、ちゃんとこなす。やはり当たり前すぎるけれど、その都度考えながらやるよりはメモしておいたほうが簡単だと思う。今日一日、実験してみたけれどかなりうまくいってもういつでも寝られる状態だ。気に入ったステンレスのホワイトボードみたいなメモパッドに書いておくのが楽しいのもうまくいった要因だと思う。単純なので、モノに弱い。写真を撮るのは忘れてしまったのでまた今度。「□写真を撮る」とチェックリストに書かなきゃいけないかもしれない。

今日は至極当たり前のことを長々と書いてしまったけれど、まだまだアホなので仕方ない。なんにせよ筋トレやら一日メモやら楽しんでやれればそれでいい。

それでは、おやすみなさい。