2020-09-10 「地獄変」 毎日の詩 東の町で青年が死ぬ 死因は詩 ひとひらの言葉に届かずあえなく早死に 詩を夢見たがため、早死にに遭う 夕、一番おおきな言葉を刻み 朝、一番ちいさなさな言葉を呟く 彼が倒れたのは、一番親しい言葉を届ける最中 故郷の雨に、彼が濡れず 憧景の途に、花は咲かない 暗雲の頃に、歌が往かない 揚揚懇々 鬼は笑う 死して屍 奏者の指を食み 力士の腕を振るう 賢人の頭蓋を砕き 色男の根をもぐ 揚揚懇々 鬼が笑う 果たして詩人、人の世で ついぞ犬の糞になりぬ