朝ノオト

空想に遊ぶ

「地獄変」


東の町で青年が死ぬ

死因は詩

ひとひらの言葉に届かずあえなく早死に

詩を夢見たがため、早死にに遭う

 


夕、一番おおきな言葉を刻み

朝、一番ちいさなさな言葉を呟く

彼が倒れたのは、一番親しい言葉を届ける最中

 


故郷の雨に、彼が濡れず

憧景の途に、花は咲かない

暗雲の頃に、歌が往かない

 


揚揚懇々

鬼は笑う

 


死して屍

奏者の指を食み

力士の腕を振るう

賢人の頭蓋を砕き

色男の根をもぐ

 


揚揚懇々

鬼が笑う

 


果たして詩人、人の世で

ついぞ犬の糞になりぬ