「voice record #1」
いつだったか、昨日の夜か仕事の合間、
詩の朗読、を聞いた
洒落た映像の中に俳優がいて
ゆっくりと、かなり気取った息遣いで、大袈裟な言葉を声にしてゆく
これは芸術、という顔をしていたし、そうだと思った
無粋なもんでこっぱずかしく
穏やかな気持ちでいられなかったのがやけにはっきりしていた
演じる、祈る、振る舞っている体の前で
なにか疑う意味があるのかと
声に出したら、自分の声が聞こえた
穏やかな気持ちでなかった
想像とほんの少し、致命的に外れた声は
喉から胸を振動させて、居心地が悪い
自由に書けると思っていた言葉が
喉のところで詰まる
意味の前に、言葉の前に、鮮明で
息を吸って声にするたび、喉が枯れるし、疲れる
大袈裟な言葉より、どうしようもなく胸をどきどきさせる
きっと、あいうえおだって物語るのだろう
だとすればいっそ振舞ってしまえと思うのである
月が綺麗ですねだとか、あなたは太陽だとか
そういうことをいう声がとても愛しい