朝ノオト

空想に遊ぶ

「見ていた」


もやのかかった静かな街の

朝鳴く鳥は見ていた

目覚める学生のまぶしい景色を

 


暮れてきた雲の大きな日の

目覚めてきた若者は見ていた

17時のサイレンに遊ぶ子どもの影を

 


椿の大きな公園の影で

帰りたくない少年は見ていた

食糧を買い込む母の足取りを

 


見えずともわかる道を辿って

着慣れた服の中の女は見ていた

窓から這入る生き物の速さを

 


踏まないように気にされて

小さなクモは見ていた

ひとり花を飾る男の顔を

 


知らない街になれはじめ

よく眠った勤め人は見ていた

羽を休めた鳥が飛び立つ先を