「なんでもない」
よく食べよく動く
ゆっくり風呂に入ってたっぷり寝る
起きるとすこぶる体調が良く、空も青い
少し泣きそうになって、なんでもない
意味もなく歩く
知らない駅で知らないものを探す
知らない地図をまた一歩と埋めてゆく
少し息が上がって、なんでもない
未来のことを考えたりもする
原因と結果を見つめては、組み立てたりする
明日は何時に起きて、来月までにはあの本を読み、来年には少し賢くなる
少し胸高まって、なんでもない
たいてい、なんでもない
うまくいって、なんでもない、少しお得で、なんでもない、トチっちゃって、なんでもない、ぶん殴られて、なんでもない、眠たくて、なんでもない、嬉しくて、なんでもない、痛くて、なんでもない、苦しくて、なんでもない、退屈で、なんでもない、楽しみで、なんでもない、夢中で、なんでもない
なんでもない
だからといってラクじゃない、嫌いじゃない、別に悪くない、だからでなくても、やめない
なんでもないことじゃないことが、たまにある
なんでもないことじゃない喜びが、たまにある
すぐに忘れてしまうけれど、何か残っている
なんでもない体に、関係に、結果に、現実に残っている
なんでもない私たちが、なんでもない話をしているとき、思い出したりして、なんでもなくはない気持ちになったりする
なんでもないがつづいてゆく
なんでもない夜に、なんでもない月を見て、なんでもない世界はなんでもない夜景に光り、その裏側で、なんでもない街が、なんでもない朝を迎える
たくさんのなんでもないが、すこしの例外を含んでいて、またなんでもない顔でつづいてゆく