朝ノオト

空想に遊ぶ

「結実」

315
2021/05/17

PM6時ごろカバンに詰めた人生を役所に寄付する人
ワンルーム、同じ町で首を括る人
隣の部屋に宅配の人が息を切らせて、その実、流行り病に怯えている

呼吸するたび人生は膨らんでぶら下がる
止められない引き返せない体
大した瞬間ではないが、弾ければ盛大すぎる
別に優しくはないが、なんでもは汚したくないと思ううちにまた膨らんだ
まだ走らねばならない、「できれば優しくなりたい」その声は生まれることなく胸で枯れた

PM6時ごろカバンに詰めた人生を役所に寄付する人
ワンルーム、同じ町で首を括る人
隣の部屋に宅配の人が息を切らせて、その実、流行り病に怯えている

息もできないほどの瞬間が先刻もう過ぎた
結実は止まらない、結果は冗長を続ける
皆、優しさなどを思っているがこの街に、電車はアパートは人々は、静かに連なる

見たのだ、それでも見たのだ
ある優しさの一瞬、発光するのを
わたしは見たのだ