朝ノオト

空想に遊ぶ

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「暮れる」

思い出はお気に召すまま この世は浮き世、陽光に浮かんで あらゆる色は同じ方向に終わってゆくから、その瞬間は透明なグレーです 通り抜けた先のことはわからないが、起き抜けの体にさえある この空が明るくなるころ この空が明るくなるころ あたらしい皮膚…

「まだら」

引き裂かれる、色、色、色 水に濡れたような、ひとつ、ひとつ 感覚器は複数あって 無音だ、繋がらない おまえが、おまえが、おまえが ジャガードなこれまでに重さを与えてくれよ 動けない服が最も強い色です 結びついているもの 内臓で金属を撫でてみろよ ぜ…

「キャンディ」

青いキャンディ、なめてうっとり、鳥と空 ランタン、てらてら輝いて 鉄が触れたらキュッとするから ろうそく眺めてキャンディなめてた 黄色いキャンディ、なめてすっきり、冷えた朝 サラサラ、砂糖は溢れてて 骨を伸ばすと気持ちが良いわ 白昼あつめてキャン…

「デッドライン」

夜はふけてゆく 私たちが生きているまま 夏に死んだ友達 冷たい風が皮膚越しに心臓を撫でる 食べ過ぎて苦しい、 私はいつか終わる、きっとこの吐き気でなく、この夜でもなく、たしかに、そのうち、いつだか 遠く、あるいは近く、白い壁にもたれかかる 忘れる…

「Big Love Beats」

Da Da Dalila Da Dalila 丸いサングラス、奥でこっちみてる シャイなハートが結構、頼れる、分かってる 一緒にアイスクリームなんかを食べる日もあるよ アー ビッグ・ラブだなんて歌って 寝ても覚めてもとか、そういう言葉も好きよ フルのマックス、もう過剰…

「描かれる花」

ないかもしれない太陽に開いてゆくからだがある 想像の赤青黄色は命の目的をなおも語ろうとする 明るい日のことを覚えている、目を閉じても満たしてくる昼間を 赤い花か、小さい花か もう咲いている 咲いているのです ないかもしれない太陽のありか 微睡と焦…

「メトロにて」

東京には人が多く、流れてゆく車窓がこちら、マスクにさえ寄りかかる体がある 熱気、混じり、進路は絡み合う 小さな部屋、ある人にとっての体、起毛した座席 視線を慎重に解きながら、ひとつ、また一つと目的地を同じくする 私たちはすれ違わない 東京には人…

「祝祭」

歓びが先にあるとき 私たちはどんな顔をすればよいか どんなふうに体を動かせば追いつくか 赤と緑色、鈴の音、長い夜、異国の歌、多くの鳥と、甘い匂い 戸惑う心よりもずっとはやく この夜は熱を伝える空気で満ちている 今日も変わらず電球色の灯の前で ただ…

「大理石」

空想の計算機を恐れている わたしの綴ったすべてを記憶して、好んで使う言葉や、系統立てられた息遣いを明らかにするその摂理を思い描いては熱に駆られている 指先で、長すぎるほどに書き連ねられた言葉を撫でてゆく 物質、もう冷めた現象のこと

「アンプル」

ぐいと体を伸ばして黄色い薬を破ります はじけたら、はじけたら 喉の奥から音が這いずり出てこようとしているが不在で、エモーションが多く押しのけて現実がすし詰めです、むちむちのスカスカなおよそ2分間が断続的に夢中で、今は踊りたい肩がが拳が首が引っ…

「濃い」

グラスの中にさくらんぼが水面を揺らす 重いミルクと秋が混ざったみたいな色で夜にいる 複雑さ、草を食んだ生き物の生み出したものや、たくさんの植物の果てと死の堆積 特別な飴をあげたい 持ち運べるほどの、甘いものを固めてあなたの傍へ 複雑なものを探し…

「包む」

柔らかくしなやかな薄膜で以って、あなたは 観測される自意識の揺らぎ、丁寧に丁寧に作業する 手繰っては不安定な気配とともに仕舞う 温かく香る肉体は形態を帯び、あるいは無機質の意味へと沈んで恍惚としています 柔らかい幾何学があります あなたはという…

「恒星にて」

直立からの不動ではなく、溌剌と生(せい) (雨の日も風の日も、気圧、低くとも、外に出られなくとも、景気が悪くとも、病めるときも、孤独であっても……) 全然まったく関係がない それはわたしの生命でない 恒星のように沸々と、いまを見ている そう、わたしは…

「涎」

止まらない反応があって 時計の針がぐんぐん進んで 読まない本が積み重なって 食べたい店のメモは増えていって 睡眠不足の日が続いていって まだ眠れない0時ばかりで 話したい人は多くて 声を出すのはとても大変で まだまだお腹が空いていて 部屋は暖かすぎ…

「白昼の月」

金玉、あるいは性器、静止している 遠い世界で、青い霧中で、いつでも見えるところで 乾いた肌、薄い身体 肋骨が浮いている、背骨が曲がっている、腹に脂肪が付いている さりとて愛しているのだろう その美しさゆえでなく、興味深さゆえでなく いつでも見え…

「塩なめ機械」

ものすごくお腹のすく夜 たりないたりない夜、金曜日 お天気がない元気がないひと気もなければ光もない夜だから お店も空いていなければ冷蔵庫にも何もないカップ麺もなければお菓子もないもう食べたから 色々と足りないがともかく塩気が足りない 塩をなめる…

「葉書」

もう少しの間、根拠のない夢を見ていたいのだけれど、文字はわたしよりも正確に写実する 夏が来て、去り、クリスマスが来て、新しい年が来るそうだ、あるときわたしが生まれて、あなたが亡くなった 終わらない季節が無いように、この街の木々が梢になるよう…

「空転のアナロジー」

肩から首にかけて伸びる そして、すこし遠回りして背骨を降りてゆく線 傾いた木、濁ったアルミの光沢 貢献を知らないモーター音、眼窩の摩擦 夜は気配に倦んでいる 朝は美しく不在である 果なきすべての動きをしかし 明日を迎える、果たさねばならぬ 劇的な…

「いきもの」

カワセミは速く飛べるし、速く飛びたい ミツバチは刺せるが、刺したくはない ハリネズミはトゲトゲしたくはないが、トゲトゲせざるを得ない ウシはたくさん食べられるけれど、別に食べすぎない ライオンはその気になれば狩れるが、狩らない日もある ヒトは歌…

「部屋の壁と」

あれに似ている これに似ている で人生が埋まっていく 見慣れてゆく あなたが街の明かりを一つ一つ数えて人を描こうとしているから、わたしは部屋の電気を消して紙を見る 何もないのに、何もないのに 何かを見ようとしてしまう 呼吸がはね返る、生温かい 呼…

「羊市」

弾力の街は体温でふくらむ たくさんの草、踏みしめたら 羊たちをのせた気球が浮かんでいる 伸びた手足は日差しを泳いで 今日はよい日、包まれるには、今日はよい日 反復の夢は体温であふれる たくさんの言葉、開け放したら 羊たちを連れたあなたが見つめてい…

「硝子片」

混ざりえぬマーブル、痛いよ 叶わない調和はときに車中にて完結する ルールのない児戯にて、何にもならない 多く夢を見る、今であり過去である 極ごとに色づくことができぬまま鮮やかな硝子、椅子に、あるいは支えに掴まる 街頭には、書棚には、あなたとの間…

「在る」

衣替えに出遅れて風邪をひいた頃、庭の木に赤い実が成っていることを知った 0時を回る道路には老人の緩やかな逢瀬があり、異国の人達の別れがある 線路が静かになっても牛丼屋の明かりは煌々としてふらふらとスーツを寄せる それぞれの屋根の下には土曜日の…

「砂と声」

理屈はダサい 空が青いという現実以上に青いよろこびをこそ言いたい 玄関を出ればわかることでなく書きたい pm1時の私がpm10ごろの私をぶん殴る 知らんよ、と彼たちは言う 思い出した日向のかがやきをお前たちはまだ知らない 太陽が割れてもいつかは暗い 旬…

「蝸牛」

体液の沸騰した蝸牛の動き回ること 空気に耐えない鳴き声をまた虚にして甲殻は重くなる ついに手も足も出ず吊られる 食欲の中に空間がある それは視覚というよりひとまとまりの時間であって 現在から分岐する力線を持っている ゆえにさまざまな可能性として…

「風邪」

開放的な気分になって風邪をひく 私でないものには、この体が弱い 温かい風呂に入る、いつしか鼻血が湯に溶ける 広いベッドに寝て、腰や首が痛くなる 私は健康で快活な青年とされていて、希釈された暴力に晒される 私は落ち着いた生き物とされていて、抽象的…

「白白積層」

緑の伸びて触れる 緑の伸びて触れる 葉緑素は呼吸して明滅の中 緑の伸びて触れる 緑の伸びて触れる 陽光が暑く乾いて、雨に濡れて破れる 喜びが白く朽ちたとて、茂ること包むこと、伸びること 緑の伸びて触れる 緑の伸びて触れる 2020年12月6日、快晴、なお…

「それをこういうやり方で」

ああ、刻々と神経は起き上がり 微笑みの口元を、謙遜の眼差しを、愛の言葉の震えを見る 卑しくも枝葉に夢中になって 星座占いの楽観あるいはニヒリズムで現在を塗り潰して愛とします お前は眼前にいて笑っている お前は眼前にいて 断定が心地よい 星に形を与…

「絶対的な」

夜ざり、夕ざり、花の色は鈍く 鼻腔は鮮やかに捉え、肺を染める 赤、青、黄、とうとうと空気に反抗する 褪せて、乾き、綻びて、なお 花、在りき (朽ちても、思い出せよ、消えても、思い出せよ、明けても、思い出せよ) 色彩は瞬間の中、表面張力に揺れている …

「不断」

やめないとめないから倒れない 転倒を続けてあるいは回転して前進 ノーダメージ、否、肉体は壊(かい) 経験よりも先天性ゆえに永遠、我思う 真似せよと言えないが、無自覚はグロい、今も鼓動、疲労、希望、絶えず、思う その機関、その形、その熱を認めて 終…