朝ノオト

空想に遊ぶ

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「26」

わけいって わけいって またひとり ここ 少し好きな場所だから 美しい時間があるから 声は聞こえるか 私たちは遠く 散り散りとゆく 巡りゆく しかし その軌跡に交差しよう よければ ちかくにゆこう 声は聞こえるか ここ 少し好きな場所だから 美しい時間があ…

「パジャマ」

パジャマを着ると僕はやわらかい肌になります 淡く、やわらかく、あたたかさはより接近します チェック模様がよい、間隔はまろやかであるから 街に出る時、わたしは上等な布でできたコートを纏います 強く、確かに、すれ違っても触れることのないよう 光沢の…

「道具」

オレンジ色の実用 汚れるために白があり ゴムを纏ってその時を待つ 人ならざるの動力はずしり 手のひらの上に 木を切り、木を削り、木を磨いた 指の皮は無事のままに 鑿は血に滲むことなく 三日三晩はなにゆえに 千夜一夜は疾うにさり 幾星霜は鳥の鳴く頃 待…

「花が咲くところをみて」

紫色の花であると思っていたものから、白く小さな花が咲いた 洗った米粒のようにつるりと厚みのある花が咲く 目覚ましが鳴るまでまだ少しあり 耳澄ませば花零る音の鳴る、鳴る

「アーケードとペンキ」

わたしの頭よりは高く、空より低いところ 白っぽくチラつく街灯の下で水色である 夜は暗く、その他、照らされて タイルはうるさく、排水溝は深すぎる 夜に吊り下げられたものたち 黙っているみられている 緊張した意識が交わされて明滅する 雲はぐんぐん流れ…

「西瓜糖」

すいかとう、スイカトウ、西瓜糖 なんと爽やかな響き! 透明であればここちよい 液体であれば胸の透き 結晶すれば愛おしい 胸にある良きもの 濾して、西瓜糖 朝露の透明 集めて、西瓜糖 目を閉じた景色 写して、西瓜糖 夏の青く塗りつぶす日差しにある 秋の…

「入水」

乾涸びる ひとおもいにではなく、じりじりと皺を刻む 水面の光だけを掬って浴びたいが 疲れ果てた体はその術を持たない 僕ら哀れな芋虫のようで このひとときの清涼のため欄干より入水する 重力はものを考えるか 全身を伝う水のような自由を想像するかと 水…

「祝福」

おまえのあまりに鋭利な退屈と言葉は おれの心臓にだけ向いていればよい いつでも人に流れる温度を思い出させよう おまえのあまりに純真な疑いと絶望は おれの目玉いっぱいに注げばよい 空気にさらされねば果てぬなら、この目で おまえのあまりに美しい、朝…

「有形と恋愛」

もう少し歩いて あのビルの影を越えると眼前に、出会うから 空に溶けるかつて広告塔だった躯体 果てない青の深さに、わたしがいつも望んでいるみたいに乱反射する あの体は光の中で重さを失ってゆくのだと思う 金属と構造、時間の中に静止する体は傾いてゆく…

「野鳥になつかれたい」

ものすごくひとり同士、アスファルトの上 鳥がいる どこから来ただとか、なんて名前だとか、どういう声で鳴くのだとか、君に特に興味もないまま その羽が美しいと思っている 空の明るい今だけは仲良くしよう 静かに青い色にきっと私たちだけが気づいている …

「犬の詩」

ああ、犬を存分に撫でた後に何を書こう ちょこんとちいこい可愛いやつにねだられて抱き上げると質量までかわいいことがわかってしまう 愛い毛玉、ぴょこぴょこと揺れて跳ねる 何やらくわえて真っ直ぐと全身で、すべての毛でもってこちらをみている 他のこと…

「エーテル」

遠い昔のこの星のまだ余りが多かったころ人は 大陸中にレールを敷いて乗り物を走らせ 町中に管を通して水やガスを隅々に巡らせ 空にはワイヤーを渡して電気を流した 電子的な糸電話は解かれて、かわりにあらゆる地点が繋がれた 孤独はみなにゆきわたって、星…

「パンセ」

瞬間、宙にならぶ木の葉 随分、遠回りしてる言葉 わたしたちは21世紀、白い風の形を探す 静謐は破れる 永続は追われる 愛情は生まれる 廻る地層、巡る空、わたる命は知覚する わたしたちは21世紀、白い風の形を探す dim light, I saw the light, but narrow …

「Composition: spoon」

あたたかいものを掬う 形態を崩すとそれがなんだったか忘れてしまった 混ざる、もともとはソース、野菜、なんらかの肉だったもの 今となってはもういいの 頬張る準備ができているから 多く香って、取り返しはつかない出来事、皿の上は静かでいる わたしは咀…

「告白」

お金持ちのいい家に生まれて 背の高くて格好の良い容姿で 誰もが納得するような大学に入るほど頭が良く 明るく勤勉で優しい心を持って生まれて そしてもっと早くあなたに出会いたかったと思います そりゃ思います、あなたがとても素敵なので 小さなころ読ん…

「Composition: warabe」

シーケンス シーケンス はれたら あおいあおいあおいおそら おそらそらそらそらみたことか すっきりきりきりお目目がさめる シーケンス シーケンス まがたま まるいまるいまるいたから たからからからからげんきにて まっすぐすぐすぐ背筋がのびる シーケン…

「落ちる」

脱力すると抜けてゆきます 肩から床まで落ちたところで人間でなくなり そこから先は柔らかい意識です 生まれてくる前と後を繰り返したら 方向感覚が洗われる まだ朝露に濡れた新しい指先 まっすぐに伸ばします 部屋は冷たく、体が重い けれど別のところ 落下…

「はねる・まるい・おんど」

温度が艶やか、くるっと巡ってあるいてく 若い女の座った席が なにもなかったみたいに冷たかった ところで、わたしはとても温かいです この冬の空気からまるく分離した生き物でして グングンとおしのけて、はねています あふれる温度は小さな風を作ります 夜…

「大きい犬」

よく走り、よく食べ、よく眠る そういう大きい犬を飼っています 家の中に閉じ込めたままでは調子を崩してしまいますし 放っておくと食べ過ぎたりします 気分屋なやつなので、つれないことも、寝てばっかりの時もありますが、大抵はゴキゲンな生き物です よく…

「病める祭壇」

十ある箱の九つまで満たされれば、ひとつ足りない 道があるのなら尽力が足りず、馬であれば速く駆け、鳥であれば美しく鳴くこと 種があれば花は咲き、願いは叶えられねば嘘である 轍は道となって然るべきで、常に最短を往く (人であれば、人であれば) 東西南…

「トーチ」

きっかけは自由自在 その篝火は気持ちのままに照らします 犬は吠える、目を剥いて吠えている 無視できない存在を見つめている、どうしても ここは、歩くには暗すぎて、見渡すにはあまりに不確かだ 想像次第でなんでもあるはずなのに 手を伸ばしても何にも触…

「忘れる」

傷ついた植物、歪に伸びて 表面は歴史を刻み、愛おしや 膨張する夢、不安に綻びて 予熱は予感を帯び、愛おしや もう忘れたものが多く、この体が動いている 触れられれば忽ち 空気の間に励起する わたしは青い森、若い鳥、街が立ち上がる こうも自在、こうも…

「マイナス40℃」

地球の果ての寒いところでも暖かいという服があると聞きました マイナス40℃の世界 急に冷え込んだここ数日よりずっと寒い 街ゆく自転車が凍る カレー屋の香りも絶えて 小川の水の下、知らない自然が静止する温度 この街にもマイナス40℃は来ますか 暖かい服が…

「シチューのうた」

煮込めばいける きっといける 100℃、15分 煮沸でいける しっかり火を通したら柔らかくなる 素敵なシチュー あれこれ噛んで飲み込むよ 栄養、大好き、咀嚼もね 食べものならOK きっと大丈夫 あなた大丈夫なら もぐもぐいける ずっと煮込めばよく分からなくな…

「寒い日」

今日は布団を出たくないよ 冷たい空気がパジャマをすり抜ける気だから もう少しだけ暖かさを蓄える 空は青いかもしれない、ガラスは白い 朝と空気と僕と いよいよ冬 うーうー風がびゅうっと吹いたら 胸いっぱいに吸い込んで 白い朝と白い空気、白い僕 今日は…

「椅子」

脚がある わたしよりも多く じっとしている わたしよりも長く 腰を下ろして体を預ける 時に軋む、そうそうは壊れないが 勝手に治りはしない 椅子を多く作った方が良いと思う あなたのあらゆる散歩道に、海岸に、街の中で、寂しいところに 椅子があれば座って…

「瞳孔」

真夜中、25時 イカれた頭に夜がくる 楽しい流動は髄でこうして 眠気と疲れ、甘くなるまでここにいてよ、さあ 酩酊、アルコール、なくても 訂正、多く、痛い、わたしはそう、さっぱりと、不感を過ごす! 目が覚め、午前9時 冷めた頭に朝がくる 気持ちいい放射…

「モラスコ」

太陽がある 砂粒と波が踊って、これは夏の音 足跡が増えるたび、心躍らせて 夕焼けの頃には無くなる軌跡をどこかに写しておきました モラスコ、陽射しと皮膚はここ モラスコ、見果てぬ季節はここ 焼ける汗、尖る貝殻、海水は染みて、布団さえ熱い あふる温度…

「遠鳴りと彗星」

あなたは正しい、とてもまっすぐだし ぐんぐんと進んでいきところを見るのが好きだ 壊されたり壊したりすることにはらはらしているけれど、現象は遠く、心があってよかったと思う、今、あなたが目の前にいてよかったと思う わたしもぐんぐんと進んでゆく、き…

「creamy wave」

柔らかく、そして少し抵抗のある泥の波 白い波 豊かなからだの魚の群れ 動きのある夢は終わらない模様の中で 銀色、肌色、形からくる色 最も心地よい場所を揺蕩う 沈まなくてもよい 柔らかく、そして少し抵抗のある泥の波 立ち尽くしたとて眠らせない なめら…