朝ノオト

空想に遊ぶ

「町」


ワンシーン

町はうごく、僕がうごかないときも、こうして

 


春は来たのかも知れない

ふたりがゆく、自転車がゆく、小さな鳥がゆく

 


白い光の下、建物のそれぞれが町である

息をして、窓の中のそれぞれを満たしている

 


少し疲れて、山は、構造物は影を伸ばして沈みゆく

光は解けて夕暮れの色を空に広げる

そうしたら夜が来る

 


僕らの地殻はまだ静かに動いて、ゆっくり冷えてゆく

山の向こうに光を残して太陽が消えたころ、今日の鳴動を終えた

 


遠くを見ている時、脳みそに音楽が擦ってゆく

 


建物に明かりがつき始めて、指は冷えていて

その時に、その時に

寄りかかる

 


向こうに町が息をしている