「おろかもの」
嘘みたいなことが嘘だった
本当みたいなことが嘘だった
本当みたいなことが本当だった
嘘みたいなことが本当だった
本当みたいなことが本当なことにうんざりした人が嘘みたいなことばかり見つめるようになりました
嘘みたいなことが本当なときは嘘みたいに心はドキドキとして夢中になりました
でも嘘みたいなことがたいてい嘘なのは本当のことで、嘘みたいなことが本当であると期待してばかりいると、嘘みたいな本当は案外、本当のことが本当である時と同じような感じがしました
嘘みたいなことばかりを考えていたその人はそのうちに、全部が本当みたいに見えるようになって、ある春の日、空を歩いて死にましたとさ