朝ノオト

空想に遊ぶ

「鈍色ガ池」

305

2021/05/07


また一つ憂き世のため息あつまる鈍色ガ池

二度とは戻れぬ春の夜の夢

朝の来ぬ霧のなか、三千世界の鴉もろとも湿った肌で微睡み続ける

ありし日々は脆くここでは四季が褪せて白けた

月が巡るころ逸る鼓動だけ五月蝿い

嘆きながらも六道を思うがこれは得体が知れないどこにゆく

念じつつ七つ数えて目を開けてもまだここにいる

まだ憤り、感覚のない腕で八つ当たり、何か打ったかも知らぬまま

漂って漂って誰かおらぬかと九十九里、またため息が流れ込むのを聞く

十月十日を迎えてもまだ人であるか