2021-05-26 「鈍色ガ池」 305 2021/05/07 また一つ憂き世のため息あつまる鈍色ガ池 二度とは戻れぬ春の夜の夢 朝の来ぬ霧のなか、三千世界の鴉もろとも湿った肌で微睡み続ける ありし日々は脆くここでは四季が褪せて白けた 月が巡るころ逸る鼓動だけ五月蝿い 嘆きながらも六道を思うがこれは得体が知れないどこにゆく 念じつつ七つ数えて目を開けてもまだここにいる まだ憤り、感覚のない腕で八つ当たり、何か打ったかも知らぬまま 漂って漂って誰かおらぬかと九十九里、またため息が流れ込むのを聞く 十月十日を迎えてもまだ人であるか