朝ノオト

空想に遊ぶ

「イチジク」


薫るもののことをわたしは首で支える、生まれたての生き物のように

記憶の中でそれはよく育ちすぎたと思っている

 


熟れた果実はこの指に柔く

陽光を吸いこんでまだ温かい

 


表面は剥かれるために潤い

皮と肉の間、滑らかに指が通る

ふたつに割れるとき、溢るるは鮮やかさのディティー

 


ひとかけ、食めば甘く溶け

またひとかけ、さわやかに広がる

みたび、食むころ舌触りの多く

種子の弾けることに楽しむ

 


実在の果実、腹の膨れてここにいる

実在の果実、舌の渇いて水が欲しい

 


薫るもののことをわたしは謳う

あるべき果実はまた膨らむ