「ツギハギ」
287
2021/04/19
完全な表面で転げ回っている時にはなくて
それを失ったとき私たちは断面を得た
指先で滑らかな肌をなぞるようにバラバラになったひとつひとつの輪郭を記憶して辿るけれど、時にそれはこの指を切って痛い
ピタリとはまるふたつを見つけては安心したり嬉しくなったりする
不可逆さはあるとして、扱い方はさまざまだと思う
わざわざ金を塗りつけてその断面を刻みつける試み、無かったことにするような最新の工夫
鏡のヒビをラインストーンで継いでいた母もいる
これも石やガラスとちょうど同じようなもので、あるいは生きている肉だってそう
完全な表面でいることはもうできないようで新しい遊びと試みが始まっている
水は漏る、穴が空いている、傷跡が見える、そのほかいろいろ
塗って塞いで盛って隠して繕って、そのほかいろいろ
もうそんなにはしなやかではないらしい、新しい表面です