「土」
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2021/04/25
きっと何か生きているものであったり、そうでなくとも形あり日を浴びていたものが解けて今、黒くて甘い匂いのする土になっている
雨に降られたり日に温められたりを繰り返してふかふかのまま忘れてゆく
手とか脚、そういうものがあったような、触れたり握ったり絡まったりしていた
形なき香りで種子を抱く、全身と呼べるものはないが全身を使って抱きしめるそれが自然な姿勢だとわかっているから
根が伸びれくるところを知っている、それに足ることを知っている、いずれ足りぬことも
刻一刻は腐って薫る、腐らせる、濡れる、乾く、また
何を育んでいるのか、何を育むことになるかは知らない、巡らせて息をしている